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第1章1節 救援の重さ<8話>

ナトゥの質問にクルレムは長い間親友の顔を眺めた。ナトゥの顔は真剣だった。冗談を言っているのではないことを悟るとクルレムはあっけないという表情になった。

“フロイオン・アルコンなら現ダークエルフ国王の弟君にあたる。異母兄弟だから王位継承権とは遠いと言うが、若いのに外交官としてかなり頭角を現わしていると言っていたよ。”

ナトゥの太い眉毛がピクリと上がった。口数が少ないこの戦友が顔をしかめるとかなりの威圧感が感じられた。ナトゥと同じくらい戦場で長く過ごしたと言えるクルレムもナトゥがとげとげしい顔をすればちょっと緊張してしまう。重くなった雰囲気を変えるためにクルレムは軽く肩をすくめてみせた。

“まさか分からなかったのか?”
“……”

クルレムはいたずらに肩を叩こうと思ったがナトゥは避けてしまった。クルレムは行き場をなくした手を見下ろしながらつぶやいた。

“エトンまで護衛任務を引き受けるうちにフロイオン・アルコン陛下とお前が親しく過ごしているのだろうと思ったが。”
“あっちが付きまとっただけだ。”

ナトゥはぶっきらぼうに答えた。クルレムは肩をおろして一息を吐き出した.

“いくら今度の任務が気に入らなかったと言っても、自分の護衛する相手が誰なのか位は分かるのが普通ではないか? お前はこのごろ万事にとても無神経だ。いつまでも戦場でばかり暮らすことができることもないじゃないか?”

クルレムの小言が長引くと感じ、ナトゥはお手上げをしてみせて席を離れた。エトン城に到着した時、ジャイアント戦士会は礼を尽くして異種族使節団を迎えた。そしてその中の主賓として応接を受けたのはちょっと高慢な感じを与えるダークエルフ女性とフロイオン・アルコンだった。フロイオン・アルコンがただ単純に随行員の一人と思っていたナトゥとしては驚きべきだった。ナトゥは今までフロイオンに対して随行員としての仕事すらまともにすることができない無作法な青年と思っていた。クルレムからフロイオンの正体に対して明確に聞いてからはもっと中がひりひり痛んだ。狡猾なダークエルフに冷やかしにあったという考えが濃くなって自然に顔がしかめられた。ジャイアント国家ドラットの首都であるエトンは山裾に沿ってななめに築かれていた。一番内側で一番高い地域に位置した区域には王宮と戦士会の建物が立っていて、その下で山裾に沿って都市が開かれている。戦士会の建物を抜け切ったナトゥの目の前にエトン城の全景が広がった。
岩を削って作った堅固な都市。ずいぶん前から幾多のジャイアントたちがその岩壁を削り整えて美しい垂れ幕で満たしていった。ナトゥはこの都市で生まれ育ったし、幼い時代から荒いながらも美しい岩の都市エトンを深く愛していた。彼の父は同族と国家を守るために争って戦死したし彼の弟であるラークもやはりモンスターとの戦闘で戦死した。ナトゥもいつこの国のために争って命を失うかも知れない。命が惜しいと思った事はなかった。それより重要なことはジャイアントとしての名誉と矜持だった。今までジャイアント戦士として暮らしている間は世の中が単純だった。いつかどこかに現れて攻撃して来るモンスターたちと争って勝利することで矜持を守ることができたし名誉を得ることができた。しかしこれからは長年の伝統を守って来たジャイアントの大地にも変化の風が吹いて来ていた。

“ナトゥ。任務は無事に終えた様だな。”

踊る声にナトゥは振り返ると同時に礼節をわきまえたあいさつをした。声の主人はノイデだった。かなりの高齢であるにもかかわらず、若い時代の壮健な体格を維持している戦士会の首長は戦士会の建物を通り越してナトゥに向けてきちんと歩いて来ていた。ノイデはナトゥの横に並び立ち、ナトゥが先程までそうしたように都市を見下ろした。少しの間の沈黙が続いた後、老けた戦士は長い一息を吐き出した。

“…この都市ももう今までと同じようにはいかないだろう。”
“ダークエルフ使節団の訪問は私も気に入らないです。”

ナトの無愛想な言葉にノイデは首をうなずいた。

“そうなのか。若いジャイアントの中には異種族なら無条件で不思議に思って近づこうとするやつらも多いのにお前は別のようだ。”

二人のジャイアントの間ではまた沈黙が漂った。寒い北地方で太陽ほどありがたいものはない。そんな太陽を抱きしめようとするようにエトン城は一日中日の光を受けることができる角度で建設されていた。西の方角の空を染めながら暮れる陽光がエトン城の岩の建物と岩城壁、岩片たちを柔らかい金色で染めていた。ノイデが低い声でつぶやいた。普段のノイデが見せる強硬なイメージとは違いくたびれた口調だった。

“世の中は随分変わってしまったな。私がお前くらいの頃にはもうちょっと単純だったが。モンスターを退けていれば同族を救ってこの国を守ることができる。それだけ思えば良かったんだろう。しかし今は変わってしまった…”
“国王がダークエルフたちと手を握ろうとするとおっしゃったんです。戦士会ではその事をそのまま座視するつもりですか?”

ノイデはナトゥを振り返った。過去の悔恨に掛かっていた老戦士の目に徐々に光が戻ってきた。ノイデはあごを撫でてにんまりと笑った。

“私たちの国王であるレプトラバはモンスターとの戦闘で長男を失った。その事で傷心した国王は理性を失ったとひそひそと話す者もいる。しかしあの方はもとより冷徹で考えが深い方だろう。”

ノイデは身を回して王城を眺めた。岩で作られた粗悪ながらも力強い王城が夕焼け光に金色できらめいていた。ノイデが言葉を引き継いだ。

“これはとても簡単な話だね。私たちジャイアントとダークエルフが手を握ればR.O.H.A.N大陸の東を基盤としてヒューマンとエルフ勢力を押すことができるというのだろう。”
“ダークエルフたちを信じることができましょうか?”
“ナトゥ. 政治的な関係と言うのは子供たちの気まぐれな友情と違うところがない。追後問題が起こったら。私たちのすぐれた戦士たちが彼らに押されると思うか?”

ノイデはにんまりと笑ってみせたがナトゥは彼に向き合って笑って返すことができなかった。ナトゥはダークエルフのフロイオンが話した言葉を思い浮かべていた。

- あなたたちジャイアントと私たちのダークエルフは重要な共通点を持っています。 妬みから始まった憎悪…

これが妬みという捻れた感情で始まった事なら正しい結果を生むことができるのか。ナトゥはノイデが自信を持っている結果にまだ同意することはできなかった。
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by hiiragi_rohan | 2007-04-27 17:34 | R.O.H.A.N小説

フリーテストスタート!

とうとうフリーテストが4/26 17:00からスタートしました!
やはり新規さんが入り始めましたね。YNKがんばれ!
で、さっそくログインしてみました。
そしたら・・・
f0122608_219054.jpg

なにこれ・・・
私オンの僧服着てたはずなのに・・・

ただで新しい服着れちゃいました。
しかし再度ログインしたら戻ってました(´・ω・`)

乗り物もデザイン変わってるわ、デカンは声出るわで
いいことしてるんだからそういうとこはアピールしていいのよ?運営さん♪

はりきってR.O.H.A.Nやってまいりましょー。
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by hiiragi_rohan | 2007-04-27 02:21 | 雑記

貴方の知らないR.O.H.A.N…

こんばんわ~
今晩も徹夜の†柊†です~
フリーテストスタートなのに今も会社からカキコです~

今日は皆様にお役に立つ情報をば・・・

まず韓国公式サイトに飛んでくらはい
http://www.rohan.co.kr/
そんでもって以下の赤い○にそってすすんでくらはい
f0122608_22224156.jpg

するとなんと!!
韓国直輸入のウォールペーパーが!!

以上。
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by hiiragi_rohan | 2007-04-24 22:23 | 雑記

第1章1節 救援の重さ<7話>

世界を創造したオンは各種族の領土の間に強力なドラゴンを置き、各種族らが互いに入り乱れないようにした。 これはトリアンが幼い時から神殿と学校で習ってきた世界創造神話の一部分だった。 オンの思い通り永い歳月の間各種族はお互いが大陸のどこかに生きているということを知りながらも会うことなく生きてきた。 そしてロハン暦240年、ヒューマン使節団が種族外としては初めてエルフ国家ヴィラ・マレアの首都レゲンに到着した。境界を守護したドラゴンが消えたという事実はその時にエルフ達に伝えられた。ドラゴンが消えた理由も、彼らがどこに消えたことかも明らかにならないまま。
トリアンはちらりと同行者を見やった。 彼女の同行者のキッシュはデカン種族であった。 自らをドラゴンの後裔と呼ぶ彼ら。デカンという見慣れない種族がR.O.H.A.N大陸に初めて姿を現わしたのは明らかにドラゴンが消えた時期と一致した。 もちろんR.O.H.A.N大陸の住民たちの大部分はデカン種族の主張をありえない話だと感じていた。 トリアンもまた、デカン達が自ら主張するように彼らがドラゴンの子孫という話はそれほど信用していなかった。 ひとまずテカン族はトリアンが今まで見てきた絵や文で描写された姿とは大いに違った。 ドラゴンとデカンの一致点とはうろこと水掻きで作られたような奇異な耳程度だけだった。 いや、トリアンが直接会ってみたデカン種族は今眼前にいるキッシュが唯一の人物であるから、他のデカン達はまたどんな外観をしているかも分からないことであった。

トリアンはキッシュの視線の先にあるグラト要塞の高い塀を眺めた。 ささいなこと一つにも美しさを重視するエルフらには、ただ機能性だけを考え、単純に厚い壁を折り重ねるように建てている様は理解できない部分だった。 エルフのトリアンにグラト要塞の形態は美しさが欠如した冷たくて厚くて高いだけの物で、草一つ育たない、荒々しく立っている岩山にも劣る建造物であった。 しかも高くて厚い要塞の壁はトリアンとキッシュにとても邪魔な状況だった。 二人の、グラト要塞からかなり離れた丘の上で体を隠している状況では、要塞の中の状況をなかなか把握できなかった。キッシュは要塞の中の状況を見渡すためにトリアンが把握できない奇異な能力を使った。 遠く離れたまま、直接見ることもなく、要塞の中の声を聞くというものだった。 キッシュだけでなくトリアンまでもその声を聞くことができた。 キッシュはその能力を示し、ドラゴンの後裔の中でも一部の者だけが使用できる特殊な力だと話したが、トリアンはまだそれがエルフ達が知らない魔法なのか、あるいは単純に詐欺に過ぎないのか図りかねていた。キッシュが使った奇異な能力を利用して、要塞の中の一人と対話をした後しばらく、トリアンにはこれ以上要塞の中の誰かがした話やその周囲の声が聞こえなかった。 それはキッシュ同様であるようだった。キッシュの広く開かれた耳が2回ほどうごめいた。 キッシュは顔をしかめたまま言った。

“その小僧、危険に陥ったようだな。”

キッシュはトリアンが反応する前にすでに要塞に向かって丘を降りて行っていた。トリアンはため息を吐いてその後に従った。いったいなぜこういう任務を引き受けることになったのか。彼女は今まで何度も繰り返し自問自答してきた質問を頭の中に今一度思い出していた。
ヴィラ・マレアの首都であるヴェーナは五つのクォーターに分けられた美しい計画都市だ。 そして魔法アカデミーはその五つのクォーターの中一区域を全て使っているほど重要なところだ。 長年の魔法研究の歴史が残っている魔法アカデミーは海を背を向けて高くそびえ立っている王宮の塔と共に首都ヴェーナの誇りだとエルフ達は考える。 丸く配置された建物中に広く開いているアカデミーの広場は学問を磨く場所らしく静かだった。 海から吹いてくる風が広場内の木々を揺さぶって、清涼な声を放っていた。 風が吹いて木が揺れて鳥がしきりになく中でもリマ・トルシルの声ははっきりと聞こえてきた。

“お願いします、トリアン。あなたは優秀な学生であり優れた才能を持った魔術師ですから。 私のつまらない心配だけならば良いのですが…そのように簡単に終わりはしないでしょう。 助けて下さい。”

こんなことだと分かっていれば断っていたなのに。このことをお願いしたリマ・トルシルがヴィラ・マレアの最高大神官だったとしても。リマ・トルシルとアカデミーの校長がトリアンを推薦して褒め称えたといっても。 こんなこととあらかじめ知っていたとすれば他の適任者を探せることだと断ったはずなのに。 なんだか面白がるようなキッシュとは違ってトリアンは誰かと戦わなければならないということ自体が嫌いだった。 エルフ達にとって、人に傷を負わせたり、他人から傷つけられるのはとても不快なことだった。 要塞入口からいくらも離れないところに岩と薮から成る茂みがあった。キッシュはそこに体を隠して座ってトリアンを待っていた。 彼は突然真顔で鋭い表情をして要塞の中をにらんだ。後に従って到着したトリアンは要塞中に漂い出る気勢に息がつまって、しばらくふらついた。 それは信義力と自然の気勢を利用した魔法の力を扱うエルフには耐えられないわい曲された気運だった。 信義気運。しかしこれ以上神聖でないあのわい曲された気運。大神官リマ・トルシルの言葉が事実なのか。

“神々は私たち皆に背を向けるでしょう。 私たちを嫌って、その憎しみによって私たち皆を世の中になかったものとして消そうとするでしょう。”

トリアンは身体が震えるのを感じて自ら両肩を抱きしめた。 キッシュはトリアンをちらりと見やり、長い指で要塞の中を示した。 要塞入口は変に感じられるほどパックリと開いていた。 そしてその中では色々な影が紛らわしく動いていた。 感じるのが難しいほどわずかに吹いてくる風の中に濃厚な死の臭いが混ざっていた。 血の臭い。何の理由であったか、ヒューマンの兵士達はお互いの命を狙いながら凄惨な乱戦を行っていた。キッシュがトリアンの肩を触って指で空を示した。 トリアンはキッシュの指につれて空を見た。 太陽が浮び上がっていくばくもなかったはずなのに周囲はむしろますます暗くなっていきつつあった。 特にグラト要塞を中心に暗雲が急激に集まっていた。 暗雲は要塞上空で非常に大きくうず巻き始めた。キッシュの指が今度は要塞かなたの野原へ向かった。 遠くからホコリ雲が騒がしく起きていた。 エルフ達の先天的に持って生まれた鋭い見解でトリアンは暗雲を起こす原因を把握することができた。 モンスターの大軍団がグラト要塞に向かって猛烈に駆け付けていた。 パックリと城門を開いてモンスター部隊を待っているようなグラト要塞に向かって。
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by hiiragi_rohan | 2007-04-23 23:25 | R.O.H.A.N小説

多忙な最中…

仕事が忙しく徹夜続きで夜な夜な禁断症状に苦しむ
†柊†です。こんにちわ。
1話だけ翻訳してアップしました。
小説だと「偉大なるドラゴンの末裔~~」という言い方は
しないのね。
実は既に日本ナイズトされてて偉大なる~~は韓国じゃ
言わなかったり?
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by hiiragi_rohan | 2007-04-20 17:04 | 雑記

第1章1節 救援の重さ<6話>

突然頭の中から聞こえてきた呼び声。 エドウィンは反射的に後ろを振り返った。 見回しながらも、その独特の抑揚と声の主人公がそばにいないという事実を直感で知っていた。 単に身体の中の緊張がその声に引きずられて噴き出しただけだった。 神殿の前と訓練場に集まっている兵士たちにはその声が聞こえなかったようで、相変らず数人ずつに散って、総司令官が殺害された事件に対してひそひそ話を続けていた。 エドウィンはその声がまた聞こえてくるのではないかとしばらく待ちながら耳を傾けたが何の声も聞こえてこなかった。 幻聴であったか。 彼は肩を得意にしては騎士団宿舎に入った。 普段ならば色々な騎士達で騒々しい朝時の騎士団宿舎。しかし今は空の建物のように静かだった。 背中で門が重い声を出しながら閉じられた。 不安がさらに一層胸を締め付けた。 極度に神経が鋭くなっていたためだろうか。 エドウィンの耳は簡易会議室として使われたりもするホール側から小さい足音を捕らえた。 彼は剣を握り直して会議室へ向かった。 ホールの門はやはり閉じられていた。 エドウィンは用心深く扉の取っ手に向かって手を差し出した。 その手が届く前に門がエドウィンに向かってするするすべるように開かれた。やがて門の内側に寄り添っていた者がエドウィンの足の下に転がり落ちた。 一気に生臭い臭いが広がった。 エドウィンは即座に門のそばの壁に身をひそめた。 足下に転がった死体はハウトだった。その躯はやはり神殿内に首を吊られたビクターのように胸に大きな穴が空いていた。奇襲を警戒しながら用心深く首を差し出して、ホールの内側を察したエドウィンは伏せて息を忍ばせた。 グラト要塞の騎士達は皆ホールの中に集まっていた。 彼らは皆騎士団の栄光ある文章が彫られたプレートメイルと愛用する武器で完全武装をした姿だった。 彼ら騎士達はホールの内側に向かって、一方向にひざまずいて頭を下げていた。 そして彼らが眺めているホールの内側でエドウィンは全身で光を放っている輝かしい人の姿を見た。

頭の中の全てのものがかき消された。

彼は世の中で最もきらびやかな存在を見ていた。 ただ一度も見たことはないが、今この瞬間その存在の正体を感じることができた。 地上に存在する者の中で最も輝く存在。 すべてのヒューマン達を守護する神・ロハの姿。自分も気付かないうちに身体から力が抜けていった。 徐々に膝が曲げられ、肩が垂れた。 鋭い金属音にエドウィンは息を引き寄せた。 自身も知らないうちに力を失った手が握っていた剣を落とした音だった。 なにげなく落ちた剣に向かって視線をそらした時、今一度頭の中で声が聞こえてきた。

- …しますか? まだ無事なのでしょうか? 私の話が聞こえてますか?

-すでに手遅れかもしれないな。

さっきの奇異な抑揚の女声とともに聞こえてきた音は金属音が混ざった不慣れな声であった。 人の声と考えにくいほど金属音が混ざったうえに特異な抑揚なので何を言っているのか聞き取れなかった。 緊迫した女の声に比べて、金属音の声はゆったりとしている感じを与えた。 少なくともその二つの声はエドウィンが目の前に繰り広げられた信じられない光景に視線を向けさせることには成功したようだった。 エドウィンは緊張でからからに乾いていた喉でやっと声を引き出すことができた。

“…誰? 誰が話しているんだ?”

私はトリアン・ファべルです。貞潔なエルフ達の女王であるリマ・トルシル陛下が治める国家ヴィラ・マレアの国民であり…

おいおい。 今のんきに正式な自己紹介をしている時か?時間が迫っていると言ったではないか。

少し緊張したような女の紹介に続き一気に彼女の話を切り捨てる金属音の声。情けなくてむしろ笑いが出てくる状況だった。 金属音の声が話を繋いだ。

-そこにおるヒューマンの小僧。 その内側の状況をちょっと説明できるか?彼が現れたか?

“…彼?”

直観的に彼が誰を意味するかは理解できた。 今かろうじてその視線を避けて背を向けているあの存在。目が合えば明らかに、自分もやはりその前にひれ伏した聖騎士達のように服従の意味でひざまずくことになるであろうその存在。すべてのヒューマンを守護する神・ロハ。エドウィンはまたホール内側をのぞいた。 ホール中に立ち込めた光を放つ存在は彼が神々の話や経典で見てきた挿絵。神殿の壁に描かれた壁画や身上で見たロハの姿と一致した。 その上見てるだけでも感じることができる神聖な気勢を漂っていた。 だがその顔に浮び上がっている残忍な笑いと血だらけになっている手がエドウィンにとってホールの中に入って、他の騎士達と共にうつ伏せになることができないようにしていた。 あの手でハウトを殺したのだろうか。 どうして? なぜハウトを?ビクターもやはりハウトのような目にあったのか?

-小僧、返事をしろ。 口が凍りついたか?

金属音の声がまた尋ねた。 そして続けて金属音の声の主を叱責するような女の低い声。エドウィンは小さい声で答えた。

“ここに…ロハが体現しました。 騎士団宿舎のホールに…”

-小僧、私の話をよく聞け。そいつはにせ物だ。 近づこうとなんかするなよ。 もうこの要塞はすでに終わった。退避しろ。 要塞の外側まで全力で逃げろ。

金属音の声は金属の属性に似合うとても冷たくて冷静な語調で話した。 しかしエドウィンの混乱した頭は一つの考えに集中していた。

“にせ物…神…奴が…ビクターとハウトを殺したということなのか!”

エドウィンは落とした剣を拾って、丹念に握り直した。 長い息を吐き出すのと同時に彼はホールの内側に飛び込んだ。 いや、飛び込もうとした刹那の瞬間に彼の肩を捕まえる手が現れた。 フックのように細くて、鳥肌が立つ程冷たい手だった。
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by hiiragi_rohan | 2007-04-20 16:59 | R.O.H.A.N小説

第1章1節 救援の重さ<5話>

ナトゥは自身がジャイアントである事実に自負心を持っていた。 また自分が優れた戦士の中の一人と呼ばれていることを内心誇らしく思っていた。 それで彼にダークエルフという異種族はとても奇異に思うようになったし、不快な感じまで受けるのだった。 計画立ったことが多い語り口や装飾的な服装は理解できるとしてもダークエルフの男たちのなよなよしさは全く堪えることはできなかった。 時々彼らの手つきはジャイアントの女たちよりもっとなまめかしく見えた。 そんなナトゥにダークエルフ使節団の護衛任務が気に入らないのは当然だった。 いっそ危険な戦闘で生き残るために両手に剣を持って、果てしなく振り回して斬りまくる方が彼の適性にはよく合った。 だが首都の戦士会で課せられた任務を拒否する権利などはなかった。うやむやにする間もなく、すでに使節団と会っているこの状況まで来ては。 ダークエルフ使節団は予想したより小規模であった。 ナトゥの目から見たらかなり傲慢で気難しい印象を持ったダークエルフの女性を中心に、若いダークエルフ五人が護衛している一行だった。 ナトゥとクルレムの部隊が位置していた戦線付近で彼らと合流し、二日ほど一緒に移動しているうちに徐々に、異種族たちの目鼻立ちに慣れて彼らを区別することができるようになった.。 ダークエルフ達はジャイアント達と適当に距離をおいて過度に親密にならないように努力する意図が見えた。 しかし若いダークエルフの一人はジャイアントを初めて見るからか、関心がこの上なく大きかった。彼は露骨にジャイアント達を観察して目が合えばにんまりと笑った。物腰がやさしい態度に慣れることができなかったジャイアント達は若いダークエルフの青年が見せる好意的な態度を苦々しく感じていた。
ダークエルフ使節団の護衛を引き受けて三日目になる日、野営キャンプを離れて出発してまもなくナトゥはクルレムに近付いて話した。

“前を調べてくる。”

“先発隊との連絡を君が直接する必要はないのではないか。 他の部下を送ればいいだろう。”

“いや。 私が行く。”

クルレムは顔をしかめた。 ナトゥは彼が何かさらに話す前にヒポグリプを追い立てて、先立って走っていった。 ナトゥは他のダークエルフ達の態度が不快だったし彼らと対話するのも気まずかった。 そのような理由で彼はダークエルフ達と一緒に過ごす時間を減らすために先発隊の状況を見回るという理由をつけて、たびたび一行と距離を置いていた。 クルレムはそのようなナトゥの態度を不満に思っていたがいつも指摘する機会を逃していたし、ナトゥもやはりクルレムの考えを知っていたが気付かないふりをしていた。 先立って走ったナトゥは手綱を引いて速度を減らした。誰か後に付いてきていた。 まさかクルレムがここまで付いてきて小言をならべようとするのではないだろうか。 後ろを振り返ると予想外の顔が見えた。 ナトゥの後に従って駆け付けた者はダークエルフ使節団の一行の中の一人の若い青年だった。 ダークエルフの青年は短い距離を全力で駆けつけただけでも息苦しく呼吸した。 白い息が冷たい空気の中に散っていた。

“とても速いですね。 追いつくのが困難でした。”

精一杯好意を表わそうとするダークエルフの青年の微笑に対し、ナトゥは眉毛を吊り上げたようにみせるだけだった。 ナトゥはぶっきらぼうに言った。

“危険だから戻って一行と合流しなさい。”
“ナトゥという名前でしたよねあなた?あなた方の国で指折り数えられる戦士と聞きました。 あなたと共に行くならばそれほど危険なことはないでしょう。”
“帰れと言っただろう。”
“あなたの能力を信じます。”

ナトゥが精一杯しかめっ面をしてもダークエルフの青年は笑うだけだった。 ナトゥはため息をついてゆっくりヒポグリプを追い立てた。 どうせ先発隊で先行しているナトゥとクルレムの部下達がモンスターたちを片付けながら道を作っているから大きく危険な場所ではないはずだった。ダークエルフの青年はナトゥのそばで並んでヒポグリプを追い立てた。 ナトゥは青年が口が厚いコートや頭を分けた帽子がだいぶ高級品であることが理解できた。 随行員のくせに構うことがよほど好きなようだな。ダークエルフたちとは。自分を見回す視線に気付いたのか、青年はナトゥを見て回りながら、またにっこりと笑った。

“そういえば私の名前をご存知ないようですね。 私はプロイオン・アルコンです。 普段はプルロンと呼びますね。”

長い名前を付けておいてそれをまた減らして呼ぶのはジャイアント達には慣れないでない文化であった。 どうせ減らして呼ぶならば何のために無駄に長い名前を付けるというのか。 プルロンと呼んでくれと言ってしたダークエルフ青年は何かを期待するようにナトゥをよそ見したり、あごを撫でたり毛帽子を直してかぶったりした。 しかしついにナトゥから特別な反応が出てこないので明らかに失望した表情であった。 ダークエルフの青年はすぐ背を向けて周囲を見回していた。 転換がはやい性分でるようだった。 でなければ難解なダークエルフ特有の虚勢なのか。

“ここはとても寒いですね。 あなた方はそのような姿でも寒さを感じないようですね?”
“…慣れるから。”

プルロンは軽い軽装をしたナトゥの姿を珍しいように見ていたが、ナトゥには毛服をたくさんぐるぐる巻いたダークエルフ達の鈍い身だしなみがむしろ滑稽に見えるだけであった。 もちろんダークエルフ達はR.O.H.A.N大陸の南側出身であるからジャイアント達が生きている北方の気温は耐え難いはずであった。 そしてそれだけ二つの種族は互いに違った。 それにもかかわらず、なぜダークエルフ達は北側のジャイアントと手を結ぼうという考えをするようになったのか。

“私たちの使節団がドラットを訪問する理由を知っていらっしゃいますか?”

ナトゥの考えはプルロンの突然な話に切れてしまった。 考えを読まれたような気がしてにらんだが、プルロンは相変らず微笑を浮かべた表情だった。

“私たちのダークエルフはあなた方ジャイアントを差して,北方の未開人と呼びます。 多分あなた方もやはり私たちを同じくらい険しい表現で呼んでいるはずです。”

実際にそうだった。 その上ダークエルフがジャイアントを呼ぶ表現よりはるかに直観的で俗っぽい悪口で呼んでいた。 子供や若い娘達の前では口外することもできないそのような表現。ダークエルフを示すその俗っぽい表現が反射的に頭の中擦れて過ぎ去ると、ナトゥは困り果て、あごをあちこちかいた。 プルロンは表情一つ変わらないまま話を繋いだ。

“だがあなた方ジャイアントと私たちのダークエルフは重要な共通点を持っています。”
“共通点?”
“嫉妬から始まった憎しみ。ドラゴンが消滅して以後この大陸を勝手に掻き回そうとするヒューマンに対するあなた方の憎しみ、そして…”

プルロンは言葉が過ぎたため、舌を打っては口を閉じた。 ナトゥはプルロンを真っ直ぐに見ながら話した。

“あなた方ダークエルフは随行員さえも国家間秘密交流に対してよく知っているようだな。”

ダークエルフの青年の目がいたずらに輝いた。 プルロンはすぐに話を切り替え、上空に手を振ってみせた。

“どうしても人々がいる所に帰らなければなりません。 やはりとても寒いですね。”

プルロンは捕まえる間もなく、話に拍車を加えては一行がある所に走って行った。 ナトゥは勝手に行動するダークエルフの青年の態度に腹が立つよりは情けなくて、肩をそびやかしてしまった。
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by hiiragi_rohan | 2007-04-14 06:11 | R.O.H.A.N小説

第1章1節 救援の重さ<4話>

少女の顔には涙跡が残っていたが泣いてはいなかった。 少女の目には断固たる光を浮かんでいた。 少年はそんな少女の顔を見ることがさらに辛かった。 昼間にそうだったように少女が怒って大きい声で泣きながら、少年の父をののしる方が気が楽そうだった。 月が雲に遮られて、夜道はとても暗かった。 自分の姿もまともに見えない夜道を少女はよどみなく歩いた。 闇に半ば飲まれてしまったその小さな後ろ姿が痛ましくて、少年は普段は歩いてみようとさえしなかった暗い道を少女について歩いて行った。 村の一番外郭に位置した家を過ぎてしばらくしてから少女は後ろを振り返った。 その闇の中でも少女が相変らず腹が立っていることを感じることができた。 少年は躊躇しながらゆっくり歩みを止めた。 その時月が雲の外で顔を出した。 少女の顔はすべて濡れていた。 少女は口を固く閉ざしたまま少年をにらみながら涙を流していた。 少女は少年に向かって叫んだ。

君のお父さんがうちの母さんを殺したのよ!

エドウィンはずきずき痛む頭を押さえながら起きた。 窓が閉まっていたのに騒がしい鐘の音が室内をいっぱい満たしていた。 彼は首を振って夢の余韻を払いのけては窓の外を見回した。 夜明けで闇が去り始めた要塞は騒がしい鐘の音とその音で眠りから覚めた兵士たちのざわめきで騒々しかった。 一人二人と、要塞の中庭に躍り出る兵士たちを見て、エドウィンは急いで服をかけ、剣を握りしめるのと同時に部屋から飛び出した。 鐘の音の根源地は要塞中央に位置した神殿だった。 神殿の鐘塔の最上部であかがねの鐘は揺れていた。 要塞の兵士たちは神殿を囲んだままためらっていた。 エドウィンは精一杯視野が届く範囲を見回した。 全ての兵士達の視線が要塞中央に位置した神殿に向かっていたことから見て、外部でモンスターが奇襲してきたことではないもようだった。 神殿の門の前にはエドウィンと共にグラト要塞に派遣された見習騎士ハウトが立っていた。 エドウィンと同じように鐘の音に驚いて走って出てきたようで乱れた姿だった。 目が合とハウトは神殿の門を示した。 神殿の門は堅く閉じられていた。 それは奇妙なことだった。 すべての神殿にはかんぬきや錠掛け鎖がかかっていなく、寒い冬にも少なくともいつもドアが開いている。 神殿というのは誰にでも開けている場所という意味であった。 しかし今、要塞の神殿の門はその誰も入ってくるのを拒否するように閉じられていた。 その上その閉められた門の後ろで相変らず鐘は割れるように鳴っている。 エドウィンは大きく息をついて剣を握り直した。 エドウィンとハウトは用心深く神殿の門に近付いた。 取手を捉えるや開かれないと思った厚い木の門は意外に簡単に開いた。 エドウィンとハウトは両側の呼び鈴がぶら下がった扉をあけて退けた。 ドアが開いて朝日が神殿内を射した。 その光を背を向けて人が一人宙に浮いていた。 首に綱がかかったままうなだれた死体の姿で。

一つの大きいホールで成り立った神殿の一番内側にはオンとエドネの石像が安置されていた。あかがねの鐘からのびる綱にぶらさがった死体はオンとエドネの姿を交互に隠しながら、勢いよく揺れていた。 瞬間はっとしたエドウィンは飛び込んで、死体を抱きしめて揺れるのを止めた。 神殿の壁にぶつかって、一層騒がしくなった鐘の音は二回ほど鈍い声を出して止んだ。 エドウィンは死体を抱いたまま神殿の外を見た。 よほど大きい衝撃だったようにハウトはその席にひざまずいて座ってロハに祈祷ををしていた。 エドウィンは彼に向かって大声を出した。

“ハウト! 行って他の騎士達を連れてこい! 早く!”

ハウトはもがくように起きて何歩か後退し、やがて身体をひるがえして、騎士団の宿舎に向かって走り始めた。 エドウィンは死体を手放して二歩ほど退いた。 彼自身の顔もハウトのように青ざめているはずだった。 悟っていても心はたやすく鎮まらなかった。 彼は目の前の事実を信じられなかった。 まだ夢を見ているのではなかろうか。 グラト要塞の総司令官のビクターブルレン男爵が胸に大きな穴が空いた死体になって、鐘に首をつられていることが現実に起こりうることだろうか?エドウィンは数人の兵士たちの助けを得て、ビクター男爵の死体を綱から外して床に横たえた。 夜を明かして、勤務に立っていたのか、武装した姿の兵士が自分のマントを外して総司令官の死体を覆って視界からかくまってくれた。 死体が視野から消えるやエドウィンはその時初めてドキドキした胸を落ち着かせて壁にもたれた。 ビクター男爵の死体にはおかしな点がとても多かった。 だがグラト要塞に派遣されて一日も過ぎない自分が先導となって調査を始めることはできなかった。 エドウィンは閉じていた目を開いて神殿の外を眺めた。 集まった兵士たちが神殿の前庭に三、四人ずつ散って、このおかしな事件に対して色々な推測を出しながら、ひそひそと話していた。 変だ。 そのような兵士たちを整列させて事件を収拾しなければならない騎士達の姿が見られなかった。 いや、以前に朝の業務を指示して訓練の準備のために歩き回っていなければならない騎士達が誰一人も目につかなかった。 騒がしい鐘の音と叫びの声で要塞全体が騒々しくなったのに騎士達はただ一人も見られなかった。 エドウィンの顔が緊張と恐れにこわばった。 騎士達を連れに宿舎に走って行ったハウトもまた戻ってこない。 何か異様なことが要塞で起きているとのことを感じることができた。 兵士達もやはりエドウィンと同じく不安を感じているようだった。 兵士達のひそひそ話と推測の声はますます小さくなっていった。 彼らが不安な表情で騎士団の宿舎の方向を眺める回数が頻繁になっていった。 エドウィンは持っていた刀を握りなおした。 皆が寝ついた夜に騎士団の宿舎内でモンスターが現れたのだろうか?ふと今ここに残っている騎士は自分だけかも知れないという考えが浮び上がった。 自分の目で確認しなければならなかった。 すでに明け方の闇は全て消えて太陽が浮び上がっていた。 雲一つない空の中心に上がる太陽がいつも以上に光をこぼしているのにも心細さと寒気を感じさせた。 閉じられている騎士団の宿舎の門に手をつけようとした途端、頭の中で言葉が聞こえてきた。 ぎこちないイントネーションで話す女の声は驚いた時の叫びに近かった。

“私の話が聞こえますが? 無事でしょうか?”
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by hiiragi_rohan | 2007-04-14 04:43 | R.O.H.A.N小説

前回のGMイベにて

GMがPTに参加するというイベントがこないだ行われましたが、
みなさんお楽しみになりましたでしょうか?
私はGM入りのPTでコワール地方~ドラット地方~エトンという
旅をさせていただきましたが…
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イヒ
GMさんごめんなさい(__)
わざとです。
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by hiiragi_rohan | 2007-04-14 03:08 | 雑記

第1章1節 救援の重さ<3話>

エトンは国家の首都であり聖地であった。 最初にR.O.H.A.N大陸に足を踏み入れた八人のジャイアントは大地から得られるものなどを集めて、神に感謝祭を挙げた。 ジャイアントを創造した大地の神ゲイルはその中に姿を現わして、ジャイアント達を祝福しながら、この大陸を征服して全ての者をひざまずかせよと命じた。 その場所がまさにジャイアント達の国家、ドラッドの首都エトンだ。

精魂を込めて細工された布で飾られた王宮はジャイアントの中でも背が高い方のナトゥにもすごい威圧感を抱かせてくれた。 いつもその雄壮な美しさに感心したが今は普段のように満足な気持ちにはならなかった。

最初のジャイアントがR.O.H.A.N大陸に登場して以後長い歳月が流れた。 しかし広いこの大陸でジャイアント達が支配している領域は極めて小さい部分に過ぎない。 全てのものをひざまずくようにしてゲイルに花を持たせるどころか、毎年数を増やし続けるモンスター達から、今の土地を守ることだけでも手に余っているではないか。

“ナトゥ?”

クルレムが低い声で呼んだ。 彼はあごで王宮を示した。 ナトゥは首を縦に振ってクルレムと共に王宮入口の階段に足を乗せた。 最近になってクルレムはずっと用心深くナトゥの顔色をうかがっていた。 ナトゥもやはりその事実を悟っていた。 弟のラークが戦場で死んで以降、彼自身も感じる程不安定な状態であったから。

“戦士会で理由もつけずに召還とは。 いったい何の用だろう。”

クルレムのつぶやきには用心深い憂慮が立ちこめていた。 ナトゥは肩をすかせてみせた。 事実彼としては戦士会の召還よりはその後にある母との出会いがより一層恐ろしかった。 戦死した弟ラークのことで悲しむ母を見るのはやはり苦しいはずであった。 ラークが戦場で誇らしい死を迎えたとのことは母には何の価値もないことであった。 ついに頭を発見できなかった弟の無惨な死体がまた目の前に目に浮かんだ。 そのような死体さえも首都に持ってくることができなかったことやはり母には大きい悲しみだろう…

ナトゥは自身の腕にかかった二つの腕輪をいじりまわした。 一つは自身の物. もう一つは死んだ弟ラークのために作られた物。 戦士会の集会室に歩いていきながら、ナトゥは二つの腕輪がはめられている手首がとても重々しく感じられた。 戦場で振り回す両手の二本の剣を足したような重さだった。

戦況報告が終わると戦士会はあまりにも簡単に解散してしまった。 ナトゥとクルレムは難しい行事が簡単に終わったことに対して半分ぐらいは安心して半分ぐらいは腹が立った。 たかが戦況報告を受けるために戦線で戦っている部隊長を首都で召還するということに。 二人の友人は虚しく笑いながら集会室を出た。 集会室の門の外にはまだあどけない幼さが残っているジャイアントの青年が立っていた。 青年は二人の部隊長に近づいて,略式で挨拶した。

“ノイデ様がお二人様をお連れしろとおっしゃいました。”

小さい声でささやく青年からは周囲の人の目と耳を敬遠する意図ががありありと見えた。 集会室での行事が終わったのに戦士会の首長がなぜまた会おうというということだろうか。 気がかりなことが残ったが案内役で現れた青年は質問する機会を与えなかった。 いつのまにか歩みを移し始めた青年の後に従ってナトゥとクルレムは戦士会の集会室の後ろに位置した小さい部屋へ向かった。 戦士会の首長のノイデは若い身体と老いた頭を持つと評価される人物だった。 今は直接出陣することがない老将戦士だが、若者に劣らず堂々とした体格を持ち、歳月による賢明さを持った者であった。 十余年前、モンスターとの交戦中に片方の目を失った後、一つ残った目は腰にかかった凄じい斧と一緒に以前よりより一層鋭い光を放っていた。 ノイデはその鋭い片目でナトゥとクルレムを品定めをするように注意深く見やった。 彼の顔にはうれしいそぶりや笑みの表情のようなものは少しも現れなかった。 ノイデは二人の戦士のあいさつを上の空に流して口を開いた。

“君らをここまで呼び入れたことは数年が経ってもろくな戦果が出ない戦況報告などを聞くためにでない。 特別に指示することがある。”

ナトゥは唇をかみ、クルレムは顔をしかめた。 二つの戦士が命をかけて守っている戦場をあまりにも簡単に無視する発言だった。 彼らが腹が立ったそぶりを見せてもノイデの冷たい表情には変化がなかった。 ノイデがまた口を開いた。

“ダークエルフ側の使節団がまもなく到着するだろう。 君らはしばらく彼らを護衛する特別任務に当たってもらう。”
“護衛…ですか?”

ナトゥは怒りを押さえ込んで尋ねた。 使節団護衛任務を任せるために部隊長の自分とクルレムを首都に呼び入れたことはどうしても腑に落ちなかった。 特別に過ちを犯して、謹慎任務を引き受けるわけでもないのに。 おかしな点はそれだけでなかった。

“そのダークエルフの使節団は私どもが護衛までしなければならないほど大事な来賓ですか?”

今度はクルレムが尋ねた。 ジャイアント達にダークエルフはそれほど良い評価ではなかった。 単純で直線的な性分のジャイアント達にとって、懸命に方程式を計算して、内心では表面と違った考えをするダークエルフ達の思考や行動は納得するには難しかった。 しかもダークエルフ達はジャイアントには理解できない力…魔法を扱う種族だった。 そういう根強い不快感がクルレムの短い質問には深くはらんでいた。 ノイデはもう一度2人の若い戦士をかわるがわる見てから首を縦に振った。

“君ら二人は近い将来戦士会の一員になるだろう。 君らの功績はすでに首都エトンまでよく知られているからな。 だから君らも分かっておく必要はあるだろう。 偉大な戦士で、岩の魂を持った私たちの国王レプ・トゥラバ殿下はダークエルフ達と手を握ろうとお考えになられている。”

二若い戦士は驚いた表情を浮かべたまま何も言うことができなかった。 彼らを眺めたノイデの口元にとても少しの間、微笑が浮び上がって消えた。
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by hiiragi_rohan | 2007-04-14 03:02 | R.O.H.A.N小説