第1章1節 救援の重さ<1話>

野原を隙間なく埋めていた雑草は乱れた足跡ですべて踏みにじられていた。かろうじて倒れることを避けた草は血で塗り固められ、風が吹いても揺れはしない…

ここは誇り高きジャイアントの勇者が守ってきた大地。今後も永遠に守り抜く大地。

口中でつぶやいてみたが、数年前の胸中深いところから込みあがる勇気も自負心も今は生じなかった。 丘上に立っていれば広い野原がひと目で見下ろせた。 悲嘆の野原と呼ばれるそこはモンスター達の初めての大規模攻勢に対抗して、ジャイアント部隊が激戦を繰り広げた場所だった。 数多くのジャイアント達が若い命を捨ててまでここを守った。 戦闘直後、軍を撤収しながら急いで建てた粗悪な慰霊塔が、野原に生い茂った長い草達の間からその頭を出して当時の残酷な戦闘を語ってくれていた。 その後30年余り。状況は少しも変わらなかった。

二時間前まで、ここでは激しい戦闘が繰り広げられていた。 そして今もその形跡がそのまま眼前に横たわっている。 若いジャイアントの兵士たちが原野に乱雑に散らばった同族の死体を収拾し、モンスターの死体を1ヶ所に集めて焼く準備をしている姿が見えた。 ナトゥは舌を打ちながら原野を見回した。 今回も無事にこの土地を守ったがモンスター達はいつか再び攻撃してくるだろう。 やつらは絶えず頭数を増やして、英知を侵して、人々の命を狙って駆け寄る。 目的さえ知れないまま盲目的に攻撃してくるモンスター達の行動は、R.O.H.A.N大陸のすべての種族に永遠に消えない恐怖感まで植え付けていた。 終わらない戦闘と戦闘の連続。
やっと分別がつく頃、奇異なモンスター達がジャイアントの営地を攻撃しているといううわさを初めて聞いた。 その時は立派な戦士に育って、同族のために勇猛に戦うことが夢だった。 その幼い時の希望のとおりナトゥは今若いジャイアントの中でも指折り数えられる勇猛な戦士になったし、比較的若くして部隊長になった。 しかし幼い時のそういう信念はもう消えて、ただ慣性に合わせて戦っているだけだ。

ナトゥは丘上に立って、目が届く所まで野原のあちこちを眺めたが彼が探している姿は目につかなかった。 その不安感がずっと頭の中に暗い考えを吹き込んだ。 ナトゥは歯をくいしばって眉間をしかめた。

“大丈夫か?”

背中から聞こえてきたのは同僚戦士のクルレムの声であった。 振り返る瞬間熱いものが額から頬をなでながら落ちるのを感じた。 ナトゥは額の傷に手を当て押した。 緊急な状況で粗末に巻いておいた包帯はすでに血ですっかり濡れていた。

“この程度の傷は。”

ナトゥは愛想なく吐きだした。 クルレムは大きな肩をすぼめてみせた。 彼の肩と腕にも血が染み出た包帯が巻かれていた。 ジャイアントの中でも比較的体格が大きいクルレムの身体には永い歳月戦場で生きてきた者らしく数多くの傷が残っていた。 そしてそれはナトゥもやはり同じだった。 二人は十五年以上を戦場で一緒に過ごして共に戦ってきた戦友であったから。

“ラークが目につかなかったな…”

無関心な口調で言い出したりしたが、クルレムはナトゥとともに丘の下に繰り広げられた野原に目を落としていた。 それはやはり親友の弟が心配なのだ。 野原の果てを最後まで目を配ったが、やはりナトゥの末の弟は見られなかった。 ナトゥの顔は険しかった。 クルレムが尋ねた。

“負傷して兵営テントにいるのではないか?”
“いなかった。”

ナトゥの短的な返事には不安の色がにじみ出ていた。 クルレムはもう一度肩をすぼめた。
可能性は二つだけだった。 ナトゥの弟は死んだか、あるいは戦場から逃げたのだ。 勇猛なジャイアントの戦士ならば、誰でも戦場で死ぬことを望む。 それが最も名誉な死だからだ。 戦場で同胞を捨てて逃げた者には一生消せない不名誉の烙印がつけられる。 だが自身や家族がその対象になるならば簡単に卑下して終わりという問題ではなかった。
ナトゥの気持ちが良くないのも当然だった。 戦闘と戦闘を繰り返しながら、その名前を全種族の中で轟かす勇猛な戦友のナトゥにはどちらがより芳しくない状況であろうか。 クルレムはちらっと友人を見た。 ナトゥは引き続き黙黙と野原をにらんでいるだけだった。
ふと、ナトゥの口から長いうめき声が流れ出た。 脚から力が抜け、肩が徐々に下がった。 ナトゥはゆっくり歩みを移し、丘を降りて行った。 半ば固まりつつあった額の傷がまた広がって、顔にこびりついた血が細い線を描いていたが、ナトゥはそれさえ感じるができないようだった。
ナトゥが立ち止まったところは遠い昔、ここで命を失ったある無名の戦士を賛えるために建てられた碑石の前だった。 碑石に寄り添って、斜めに倒れている若者がいた。 身に余る相手との戦闘を勝利で飾り、その場に座り込んで休んでいるように見えた。 もしくは勝利したという満足感で笑っているのかも知れなかった。 だがその微笑を含んでいるはずの頭はどこにもなかった。 その屍は首から上がなかったからだ。
ナトゥは死体の手首を掴んだ。 死体の手首には金装飾をいくつかぶら下げた腕輪が絡んでいた。 腕輪の金装飾は暮れていく陽光を受けて赤く光った。 ナトゥの顔がゆがんだ。 彼は冷たい屍を抱きしめた。 ナトゥの手首にかかった腕輪の金装飾がぶつかって、悲鳴を上げた。 ナトゥとラークの母が、彼らが戦場に出て行く時与えた腕輪であった。 すべてのジャイアントを守護する神ゲイルに何日も夜な夜な明かしがら祈った母の心がこめられたものだった。 弟の屍を抱いたナトゥから抑えていたた嗚咽が漏れた。 クルレムが苦々しい表情で空を見上げながらつぶやいた。

“ジャイアントを守る偉大な神ゲイルよ。 同族の名誉のために戦って倒れた者がここにおります。 彼の魂があなたの元に帰るので…”

“何も言うな! ゲイルが…神々が私たちに何をしてくれたというのだ!”

名誉な死を賛える哀悼の祈祷はナトゥの叫びに途絶えてしまった。 いつのまにか周囲を囲んだ若いジャイアント達が不安な表情でナトゥを眺めていた。 ナトゥはゆがんだ表情で若い戦士達を見回した。 まだあどけない表情が残っている若い戦士達。 すでに命を失った弟と同じ同じ年頃の若者たち。ナトゥは今までこのような若者を数えきれない程見てきたし、数えきれない程彼らの死を見送った。 今ここに立っている者の中で明日、あさっても生きている者は何人になるだろうか。 のど元で熱いものが込みあがるのを感じながら、ナトゥは頭を下げた。 そして彼は大きい声で泣き叫んでいた。
[PR]
# by hiiragi_rohan | 2007-04-11 20:34 | R.O.H.A.N小説

ということで…

R.O.H.A.Nの韓国公式サイトにR.O.H.A.Nの小説があります。
多少ながらハングル語が解読可能な†柊†は機械翻訳を織り交ぜつつも
このように和訳をしていこうかと。
よりよきR.O.H.A.Nの理解のために。
R.O.H.A.Nをされる読者のために。
私ハングル語検定1級だけどそこ誤訳だお?という勤勉な方のために。
[PR]
# by hiiragi_rohan | 2007-04-11 19:12 | 雑記

第1章 永遠の喪失~プロローグ:流星雨

第1章 永遠の喪失

プロローグ:流星雨

丸い舞台を半円形で囲む七つの柱へ順々に火が灯っていく。 闇を帯びていく空を背景に浮び上がる青い魔法の光源。 そして一拍遅く舞台中央の魔法陣がかすかに光り始めた。 観客達の間で低い感嘆のどよめきが波のように起きてはおさまった。 照明はまだ薄暗く、その声々に合わせて、舞台中央に立った俳優は低い声でつぶやき始めた。 徐々に俳優の独白は力を得て、やがて強烈な叫びになった。 彼とともに俳優の足元で舞台を飾っている魔法陣が一気に光を吹きだす。
両親の間に挟まって、行儀良く座っていた幼い少女は肩をすぼめて周囲を見回した。 少女には舞台でくり広げられる歌劇より、客席であるすべてのエルフらが感心のため息をついて、涙をぬぐい取る姿の方が興が深かった。 寿命が長く、精神的成長が早いエルフといえど、少女は演劇の中で煩わしく絡まる関係や権力の流れを理解するにはまだ幼かった。 長い独白を詠じている俳優がエルフらの文化や芸術を主導する人物であり、全大陸に知られる程偉大な俳優であり劇作家で、後日エルフの歴史に記録されるだろうという事実も少女には何の意味がなかった。
目じりにたまった涙をぬぐい取っている両親をかわるがわる眺めていた少女はなにげなく空を上げてみた。 いつのまにか闇は空を埋め尽くし、覆っていた夕焼けを全てその厚い裾に隠してしまった。 西の空の果てだけがかろうじて薄い光を残しているだけだった。 その時、長い尾を残しながら、光の幹が一つ夜空を切り裂いた。
ぼうぜんと空を見ていた少女が急に息を詰まらせた。 驚いた少女の母が心配に充ちた声でささやいた。

“どうしたのリマ? どこか具合が悪いの?”

リマは首を横に振りながら空を示した。 客席を全て埋めたエルフ達の視線が乱れ始めた。 観客達は既に舞台を見ていなかった。 俳優達も演技を忘れて夜空を眺めていた。
夜空はもう暗くなかった。 数十,数百,数千,推し量ることができない程数多くの光が闇を裂きながら、大地に向かってあふれ落ちてきた。 誰かがつぶやいた。

“…流星雨か?”

リマは勢いよく首を横に振った。 流星雨ではない。 あれは非常に大切な方の砕けた肉体、最も偉大な方の散ってしまった意志だ。 幼いリマとしては魂の向こうで見てしまったこの真実をどのように周囲の人々に表現したら良いか分からなかった。
お母さんが微笑を浮かべながらリマの耳にささやいた。

“本当に美しいわね。 そうでしょう?”

しかし少女の小さい肩は震えていた。
母も、父も、周囲のどの人も全く知らずにいる。 暗い森で、陰気なドロ沼で、人気のない海岸で身体を起こす奇怪な生命体達。 殺気に満ちた怪物らの目。 一度も見たことないあの遠い地方の平野、その上にごちゃごちゃに散らばっている数多くの死体の山。死んでいく男、号泣する女、家族を失ってさ迷う子供。 悲鳴、血、折れた剣、ひしゃげた鎧…リマの頭の中で混乱と闇の苦しい映像が絶えず流れて入ってきた。 目を閉じても目の前に現れる映像を遮ることはできなかった。 青ざめたまま、リマは母にもたれかかり泣きわめいてしまった。
その日は世界を創造した主神、全ての者の父・オンがその意志と魂を全て失って消滅した日だった。 そして後日エルフ王国ヴィラ・マレアの大神官で女王になるリマ・トゥルシルが初めて自身の能力を自覚した日だった。
[PR]
# by hiiragi_rohan | 2007-04-11 19:08 | R.O.H.A.N小説

遅ればせながら。

ロハサーバーギルド「桜組曲」のギルドマスターしてます、†柊†と申します。
ギルドメンバーのれな姫に触発されてブログを作ってみました。
更新するかは不明です。ゲーム内でお会いしたら「マランコエ~」と
お声かけてやってください。
[PR]
# by hiiragi_rohan | 2006-12-20 07:06